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■映画『シン・ゴジラ』とビジネス ~現実の危機に備えよ

 日本国内だけの興行収入で50億円を突破する見込みの大ヒット映画『シン・ゴジラ』は、多方面に経済効果をもたらしている。
 不況下のこの国で、それは虚構のゴジラが現実にもたらしたグッド・ニュースだ。

 もともと人気のある怪獣映画であるうえに、『エヴァンゲリオン』を社会現象にした庵野秀明が総監督を務めたことで、話題は十分。
 当然、関連グッズもたくさん作られている。

 庵野監督が自ら編集した資料集『ジ・アート・オブ シン・ゴジラ』(グラウンドワークス)は、プロット、準備稿、決定稿、最終決定稿と進化する脚本も完全採録されているという。
 これ、なんと1万円以上もする。
 マニア向けか、大人買い狙いだろう。
 歴史に残る傑作なので、抑えておきたい資料かもしれない。

 一方、アニメ『エヴァ』のサウンドトラックが気に入っている人には、同じ作曲家の鷺巣詩郎さんが手がけた『シン・ゴジラ音楽集』がオススメだ。
 このジャケットを見るだけでも、今回のゴジラが怖い顔をしているのがわかる。

 映画の内容が深刻なので、音楽も重厚だ。
 混声合唱が効果的に使われている。
 聞いているだけで、ゴジラの狂ったような暴れぶりに潜むせつなさを発見するかもしれない。
 3240円。
 リーズナブルだ。

 なお、『シン・ゴジラ音楽集+Shiro SAGISU outtakes from Evangelion』という別アルバムもあり、これは8800円。
 ジャケットが同じなので、お間違えなきよう。
 映画をまだ見ていない人には、映画パンフレットがAmazonで売られている。
 もちろん、バンダイからゴジラ ムービーモンスターシリーズ ゴジラ2016」(2780円)というおもちゃも発売されている。
 でも、これも顔が怖い。仕方ないかw

 もっとも、ロケ地になった大田区は、シン・ゴジラとコラボしたまちおこしで区内への集客を狙っている(写真は大田区の公式HPより)。

 観光課は、大通りを封鎖して大規模なロケが行われた蒲田東口商店街の商業協同組合(JR蒲田駅東口付近)と共に、大田区の19の商店街で、ゴジラとコラボレーションしたフラッグを713日から設置している。
 いわば、「ゴジラの聖地」として名乗りを上げた形だ。
 ゴジラに壊された街は、世界的に有名になる。
 今後世界103ヶ国以上に配給されるので、インバウンド効果も期待できるかもしれない。

 大田区役所の本庁舎3階の展示スペース(大田区蒲田五丁目1314号)では、818日(木)から25日(木)まで平日の午前830分から午後5時の時間帯に、『「シン・ゴジラ」パネル展~大田区にゴジラ来襲!』と題したパネル展を実施中。

 JR蒲田駅東口の大通り(多摩堤通り)約800メートルを封鎖し、300名にも及ぶエキストラ、忙しく立ち働く制作スタッフ、高所作業車による撮影など、映画ならではの迫力あるロケ風景を写真で楽しめる。

 さらに、86日(土)~930日(金)の期間中、『シン・ゴジラ』公開に合わせ、ゴジラの”黒”のイメージと連動した「おおたBLACKキャンペーン」というスタンプラリーを実施している。
 黒をテーマにしたオリジナル商品が、商店街から大集合。大田区と川崎市との連携事業で開発し、話題となった「黒湯サイダー」も再登場。
「東京銭湯」の記事より

 キャンペーン参加店舗と大田区内銭湯、大田区観光情報センターを巡るスタンプラリーを実施し、抽選で“黒”の賞品が当たるという。
 これも、大田区内で商売をしている区民への経済効果を高める取り組みだろう。

 大田区と「シン・ゴジラ」がタイアップして行うキャンペーン事業には、天然温泉の黒湯で知られる「大田黒湯温泉 第二日の出湯」(大田区西蒲田6丁目517号)の浴室に、ゴジラと大田区内にある名所のペンキ絵が描かれる取り組みもある。
 このゴジラ湯(ゴジラ銭湯絵)は、今年(2016年)10月下旬まで公開予定。
 同じ期間中、大田区内の全銭湯でゴジラシリーズの歴代ポスター(28作品)が展示されている。



●日常の仕事を通じて、有事に備える商品・サービスを

 他にも、「日本で最新作のゴジラが観たい」という怪獣フリークの外国人が来日し、いち早く新宿で『シン・ゴジラ』を観た外国人もいて、Youtubeで興奮してこの映画について語っていた。
 映画は劇場公開の期間が限られているから、ブームも短命で終わってしまう恐れが常にある。
 それは、観光による集客増も頭打ちにしてしまうことを意味する。

 …と懸念していたら、なんとゴジラがアニメで映画化されるというニュースが飛び込んできた。
 シネマトゥデイの記事によると、『GODZILLA』のタイトルで、既に公式サイトもオープンした。
 そのビジュアルを観ると、これまでのゴジラ映画のイメージとは異なり、他の惑星か未来を舞台にしているようにも見える。


 ゴジラの劇場版アニメ化は世界初だそうで、来年(2017年)の公開を目指して製作中という。
 ストーリー原案・脚本は、テレビアニメ「魔法少女まどか☆マギカ」「PSYCHO-PASS サイコパス」シリーズで知られる虚淵玄さんが担当するそうだから、これは一筋縄ではいかないだろう。

 『シン・ゴジラ』は、3・11をふまえて人命を大事にし、被ばくの影響を強く意識させ、同時代の日本の状況をリアルに映し出すことによって、ゴジラに確かな存在感を演出してみせた。
 アニメの中で被ばくの恐怖を描いたのは、『はだしのゲン』などいくつかある。
 ゴジラ映画では、被ばくを無視した設定はできないはずだ。
 それがどこまでアニメの中で描写できるのか?
 観る前から期待と不安が交錯する…。

 来年以後も、ハリウッドでゴジラ映画が作られる。
 そのため、ゴジラ人気は再燃・拡大し、しばらく続いていくだろうが、日本人が日本のお家芸であるアニメでどこまで被ばくを実感的な恐怖として描けるのかは、注目しておきたいポイントだ。
 このキャラ設定を無視しては、ゴジラがゴジラではなくなるし、ゴジラが日本を人類を襲う根拠も失われてしまうからだ。

 3・11で被災した日本の国民は、より若い世代、とくに子どもに被ばくの影響がないことを祈っているし、それを虚構の世界にも望むだろう。
 かつて原爆を落とされ、それなのに原発を作ってしまった現実から逃れられないからだ。

 3・11の後、僕は『子どもたちの3・11 東日本大震災を忘れない』(学事出版)という本を作った。
 東北の被災エリアに暮らしてきた10代たちが書いた被災体験記だ。

 彼らの声は、他人事ではない。
 首都圏直下型地震について、2011年にM7級は5年以内に75%と東大地震研究所が発表している。
 つまり、2016年までに75%という高い確率で首都圏に大地震が来ると予測されているのだ。
 M7級とは、熊本地震(M7.3)、関東大震災(M7.9)あたりの大きなエネルギーだ。
 映画『シン・ゴジラ』のように、科学によって国難がピタッと止まってくれることはない。

 むしろ、映画の中で描かれたように、円や株の暴落を含む経済的損失は莫大になるだろう。
 首都圏で巨大地震が起こることは、ただの災難ではない。
 首都機能の麻痺、日本経済の破綻、治安・国防の悪化など、同時にさまざまな困難をもたらす。

 そうした複合的な緊急事態に、政府だけが備えるのでは心もとない。
 僕ら市民が民間で、たとえば緊急避難ルートをみんなで歩いてみる検証ツアーや、膨大な数になる被災者を受け入れる施設を首都圏に隣接するエリアに確保する保険などを商品化し、ビジネスとして日常生活の中から考える必要があるだろう。
 その際、子ども視点の防災を考える上で、『子どもたちの3.11』は貴重な資料になるはずだ。

 3・11で自主避難した福島の人たちが、どれだけ政府を頼れなかったに思いをはせよう。
 僕らにはまだ、安心と信頼の仕組みを作れる時間的な余裕があることを祈りつつ。

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