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■政治でなく、ビジネスによって社会を変え始めた10代

 少し前に「10代の起業家よ、この夏は渋谷に集まろう!」という記事を書いた。
 その後、僕の新刊の執筆が遅れたり、他の用事が立て込んできたため、イベントは見送ることにした。
 もっとも、10代の起業家は、急速に国内外で増え続けている。
 そこで今回は、その事例のほんの一部を紹介してみたい。


 三上洋一郎さん(※右の写真。GNEXの公式サイトより)は2013年、高校1年だった15歳の時にサムライインキュベートから出資を受けてweb関連事業を行う株式会社GNEXを設立した。
 中高一貫校に通っていた三上さんは、中学一年の末に学生団体を立ち上げ、Twitterでメンバーを集め、そこで考えたサービスを学生向けのビジネスコンテストに出した。

 すると、サムライインキュベートの審査員特別賞を受賞。
 副賞として500万円の出資確約だったが、当時の彼はまだ13歳だった。
 彼は自社事業として中高生・大学生向けのクラウドファンディングサービスBridgeCampを手掛け、16歳になる頃には高校を中退し、事業に専念。
 城戸内大介さんがCAREER HACKで三上さんにインタビューした記事が面白い。
 三上さんは、その記事でこう言っている。

「同級生の間では『MARCH以上の大学に行けなかったら終わり』みたいな話があったんですね。
 それってすごく生きづらい、多様性がないって感じて。
 社会との接点を持って自分の生き方を考え直す環境が必要だと思ったのが、BridgeCampを始めた理由ですね。
 高校生からすれば1万円を稼ぐって、時間も労力も大きいじゃないですか。
 その段階で数万円稼ぐよりも、付加価値を高めておけば、将来にわたって数百万円得られるかもしれない。
 倒産することになっても、その経験を将来に活かせるのであれば価値がある」

 三上さんは現時点で18歳だが、彼に触発されて起業する同世代も出てきた。
 その一人が、大阪府立の高校に通う傍ら16歳で起業した小山さんだ(※右の写真。公式サイトより)。

「中学3年生の時に、今でも先輩起業家としてお世話になっている三上洋一郎君が始めたサービスBridgeCampに利用者側として活動し始めました。
 その後は、しばらくボランティア団体の方で活動させてもらいました。今もそのボランティア団体は活動を継続しています。
 次の挑戦したのが、ビジネスコンテスト。
 世界経済フォーラム(ダボス会議)傘下のグローバルシェイパーズ東京ハブが開催したRe-Generate Japanに参加したことが起業への大きなキッカケになりました。
 そのビジネスコンテストで提案したのは、オンラインプログラミング教育プラットフォームでした」

 小山さんは現在、ManaLabの代表として小中学生を対象とするプログラミング教室や10代向けのメディア事業などを運営している。
 三上さんや小山さんの世代の起業家に特徴的なのは、自分の稼ぎのためだけにプロダクトやサービスを開発するのではなく、世の中にある困りごと(=社会的課題)を解決できる仕組みをリリースするという点だ。
 これは、日本だけでなく、世界中で同時多発的に起きている起業家マインドだ。
 彼らは知らないかもしれないが、時代は金儲け以上に深刻な社会的課題を解決するソーシャルビジネス(社会起業)へと大きく舵を切っている。

 イギリス生まれのスタンフォード大学1年生、ジョシュア・ブラウダーさん(19歳 ※右の写真。twitterより)も、その一人だ。
 Forbesの記事によると、ブラウダーさんは12歳の時にユーチューブ動画を見ながらコーディングを独学で学び始め、2010年からiOSアプリを開発してきた。
 アプリ作りを始めてすぐにイギリスのカフェチェーン「Pret A Manger」の公式アプリを開発し、同社に売却。
 その後、Freedom Houseをはじめとする人権団体向けのアプリの開発を手掛けた。

 しかし、18歳で運転免許を取得して以来、駐車違反切符をたくさん切られてしまった。
 彼は、「異議申し立てをしているうちに友達の分も手伝うように」なった。
 そこで、「DoNotPay」(支払うな)というボットを開発し、高校卒業後にたった3か月で完成させた。

 このボットは、チャット形式で友人やその家族に異議申し立てをするためのプロセスを教えるだけでなく、当局への嘆願書も作成できる。
 ロンドンで20159月に、ニューヨークで今年(2016年)3月にリリースして以来、これまでに25万件の異議申し立てを行い、16万件の違反の取り消しに成功したという。
 ブラウダ―さんは現在、シリアなどからの難民向けに難民申請書類の作成を支援するボットを開発中だ。
 ボットはアラビア語に対応し、英語で書類を作成することができる(※リリース予定は9月)。



●自分たちがほしいゲームは、自分たちで作ってしまおう!

 起業するのに、プログラミングができなきゃいけないわけではないし、高校生以上である必要もない。
 もちろん、男子である必要もない。

 仁禮彩香(にれい・あやか)さんがCOOの齊藤瑠夏さんと一緒に株式会社グローパスを立ち上げたのは、中学2年生だった2011年の頃だ(※写真はtwitterより)。
 二人が幼稚園と小学生時代を過ごした湘南インターナショナルスクールでは、価値観が違う人とどう共生するかを常に問い掛けられ、アイデアを形にするのが当たり前だった。

 しかし、中高一貫の中学校に通い始めると、子どもの持っている才能を伸ばすどころか、他の生徒とのバランスをくずさぬように突き抜けているものを削る作業が教育に盛り込まれている、と感じた。
 そして、仁禮さんは「日本の教育を変えよう」と考えた。
 人が違えば、価値観も異なる。
 多様な価値観を理解しなければ、戦争も起こる。

 一人だけが億万長者になって勝利する人生ゲームではなく、価値観の異なるどうしが互いに認め合えるゲームにできないのか?
 そう思った仁禮さんは、たとえば日本の人生ゲームを韓国の子どもが遊んだり、アメリカの人生ゲームを日本の子どもが遊ぶような仕組みがあれば、互いに相手国の価値観を知るチャンスができるのではないかと考えた。

「すべての国の子どもたちが1回、同じ人生ゲームで遊んでみる。
 そして、『このゲームで1箇所だけルールを変えられるとしたらどこを変える?』と聞いてみる。
 ある国の子どもは『最後は神になるをゴールにしたい』と言うかもしれないし、べつの国の子どもは『財産ではなく、自分が幸せになれかどうかで勝敗を決めたい』と言うかもしれません。
 この取り組みを世界中で展開していけば、お互いの価値観をもっと深く理解し、尊重し合えるようになるかもしれません」

 そこで、仁禮さんは友人の齊藤さんに「すべての国の人々の価値観を反映した人生ゲーム」を作ってもらった。
 このゲームでは、スタートが4箇所ある。
 インドネシア、サウジアラビア、ポーランド、イタリア。
 それぞれの国の国民性や価値観を活かし、プレイ途中で「留学」もできるというゲームだ。
 彼女たちは、「世界中の子どもたちが毎年新しい人生ゲームを作り、プレイし合うこと」を目標に掲げ、国内外の学校にこの「人生ゲームプロジェクト」を広げていこうと動き始めた。

「この人生ゲームが世界中の子供達にプレイされる時、世界から戦争がなくなるのではと思っています」
 仁禮さんは、2013年のTEDxKids@Chiyoda(下記の動画)でそう言った。



 以上は、馬岡祐希さんが2014年にSHINING YOUTHというサイトで紹介したものだ。
 彼女らが考えた人生ゲームは、電通報の記事によると「企業と商品化の準備を進めています」とか。
 株式会社グローパスには、3つの事業がある。
① 子どもが子どもの夢を形にする事業
② 子どもが未来志向の学校をつくる事業
③ チャレンジする大人を子どもが応援する事業(企業と商品開発)

 電通報の記事によると、2014年には湘南インターナショナルスクールの運営を引き継ぎ、
親子で一緒に学ぶ新しい形の共育コミュニティー「g CaféSchool」の運営もしている。
 平日の昼間にすいている喫茶店に協力してもらい、教わったお母さんたちが今度は先生になる仕組みで、すでに全国8カ所に広がっている。

 他にも、卵の膜を使って燃料電池の価格を55分の1にした女子高専生もいる。
 京都市立堀川高校のチームsunflowerは、途上国と先進国の大学生が企業と協力して途上国の学校の美術の授業などを活用し、子どもたちとオリジナル商品やパッケージデザインを制作・販売し、その利益が子どもたちの教育や給食費などに還元される企画を考え、高校生のためのソーシャルビジネス企画コンテスト Social Innovation Relay 2015で優勝した。

 他にも、さまざまな10代の起業家が生まれつつある。
 詳細は、拙著『よのなかを変える技術』(河出書房新社)を読んでほしい。
 10代だって、自分の毎日の仕事によってこの生きづらい社会を変えられる。
 主権者意識に目覚めれば、「政治だけが社会を変える」なんて狭い考えはもたないのだ。

【関連ブログ記事】
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 子どもが稼いで何が悪い? ~10代の起業家たち

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