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■貧困を強いられて育つしかなかった日本の子どもたち

 切実な生きづらさをもった人間こそが、多くの人を巻き込む強度を獲得できる。
 生きるだけで大変だからこそ多くの人に訴えたいものがあり、それが表現を動機づける。

 そんなアーチストほど売れてほしいし、売れることでその人と同じように生きづらい多くの人たちに希望を与える。

 2WINという双子のヒップホップ・ユニットがある。

 まずは、彼らの曲『One Way Ride』を聞いてみてほしい。
 One Way Rideは「片道」(片思い)という意味だ。戻る道もなければ、思いが届く先も見えないが、先に進んでいくしかないという決意だ。


HipHop がなければ俺達
貧困が心の方まで侵食する日常を過ごしたんだ一生
HipHop ならば多分
君の変えられないような進路も変えられるよきっと

あのコーナーに毎週いる13歳の売春婦
悪いことを悪いと知らずに毎晩横顔照らす赤灯と三日月
だいたい親父はいないかヤクザ
お袋に手にもつ包丁やヤクが 子供傷つけ恐怖覚えた目
物心ついたときには汚れた手
こんな生活に未来ある? 答えはNo
あいつとの連絡が途絶えた夜 何もできずにあんときも
あいつを街で見かけた半年後 準構成員のカバン持ち
いなくなったら金もって高飛び
street じゃなくて stage で浴びたいスポットライト
いつでも立てるスタートライン

贅沢はしたい 貧乏はつらいから
泥棒をしたり 人騙したりする奴らもいる
金に目がくらむと自分じゃなくなる もうさんざん見てきた
簡単なことばっかなのに争いや奪い合い だから歌いたい
金に困っていなくなったり 友達同士殺しあったり
古い友達がまた刑務所にって話だって今年もあった
嘘みたいな話が現実に起きてる
僕らの街には悪魔が住んでるから
強い意思がない奴は流されていく
俺はマイナスをプラスに変えてから死ぬ
『One Way Ride』の歌詞より抜粋)



 2WINの前、彼らが10代の頃に結成していたヒップホップグループがBAD HOPだ。
 BAD HOP時代の名曲『Liberty』を聞いてみてほしい。

俺を逃がさないように囲む工場の煙
出口で鳴らしているさ 包丁で手首
綺麗に一度全てを更地に戻したいけど
抜け出せないこの国のG.H.E.T.T.O
行きたい場所はどこか分かってても あの頃みたいに俺なら
汚い路上でもたむろしていた頃とは本当に全く違ぇんだ
覚悟決めたから全くもう感じないジレンマ, my hood
氷と雪ですげえ冷めた街 問題ならずっと変わらないよ 金絡みだって
母子家庭 家に押しかける 怒鳴り散らしている ヤクザの取立て
ふれたい もしも降りられるなら 気づけば俺が取り立てる側
環境を言い訳にグレ 見えない何か探している内 気づけば引けない立場
学校みたいに簡単には抜け出せないけど
マイクもってステージの上で有名になりたいんだよ


●貧困は、「生きるために罪を犯す」ことを弱者に強いる

 BAD HOPについては、VICE JAPANが彼らを取材した21分の映像がYoutubeに上がっている。

 川崎のうらぶれた街で生まれ育った彼らが、なぜヒップホップにすがるしか生きていけなかったのかを知るうえで、一見の価値があるだろう。



 こういう「元不良」のミュージシャンが成功するのを、苦々しく感じている人たちがいるのを知っている。

 10代の頃にやんちゃな同級生にいじめられた経験のある人なら、苦々しいどころか、「成功なんかするな」とさえ感じるだろう。
 その気持ちがわからないわけじゃない。
 僕も妹が小学生の頃、地元のヤクザの息子につきまとわれたことがあるから。

 それでも、どんな人だって最初は赤ちゃんだったのだ。

 赤ちゃんを育てる環境が、大人でも救いようのない貧困街だったなら、自分もそういう街の一画で生まれていたなら、いじめる側に回っていたかもしれない。
 そういう想像力を持たないまま正義の御旗を一方的に掲げることは、僕にはできない。

 2WINはメジャー・デビューした。
 より多くの人の前に立つことになった。
 それは、成功の大きさに比例して、彼らの魅力と同時に過去の加害性にスポットライトが当たりやすくなることを覚悟したってことだ。

 物心つく前から悪いことをしなければ生きられなかった彼らには、いつか誰かが自分の過去をあぶり出そうとも、前へ出て行くしかない。

 自分はヒップホップに出会い、地獄のような場所から出ることで救われたが、今なお自分の仲間や後輩には何にも救われずにいて、悪いことを重ね続けている。
 そうした現実を少しでもヒップホップで救いたいと声を上げる時、彼らは彼ら自身が選べないまま犯してしまった罪を背負いながら生きていくしか無いのだ。
 元・少年犯罪者だろうが、中卒だろうが、低学力だろうが、彼らには彼ら自身の切実な不幸や不遇を売り物にして叫ぶ他に、合法的に金に換えられる資産は無いのだから。

 幼かった彼らに重い罪を犯させた貧困を作り出し、放置しているのは誰か?

 そういう問いかけに注目しなければ、彼らと同じように罪を犯し続ける10代は後を絶たない。
 最後にBAD HOPの『Stay』を聞いてみてほしい。
 貧困を子どもたちに強いた僕ら大人の宿題を、彼らの歌詞の中に探してみてほしい。



逃げ道なんてのねぇな 日々 汚れてくぜ手が
ガキの頃からそうさ 血の付いたカネで飯を食う
「あの子はヤクザの倅、遊んじゃ駄目」と友達の親が言う
カエルの子はカエルha?  鳶が鷹を産む
腹を括ったガキが 目を赤く染め暗闇を歩く
ほら居場所を出ればダリい クズ共から白い目を浴びる
イバラで血だらけの足で歩く 真っ赤に染まる街
東大より高い 川崎streetの偏差値 授業料もビッチじゃ計り知れねぇ
見れば誰もが眩暈起こすぜBOW
14の誕生日は単独房で過ごし
外に出れば戻ってくゴロツキの集う裏路地
隣に目ギラつかせた仲間がいた

14smoke weed 15で刺青16で部屋住みで
傷は絶えずに犯す間違い 出来ない真面目に
お巡り相手に日々が戦い
何度もブツを捌いた 欲のため人騙した
女も金に変わった 馬鹿は喰いものになった
シャンパンにweed 毎晩party 汚いmoney 関係ない
飼い殺しバビロンの犬 欲溺れて先なら見ず
17182年の空白 次で見つけた夢が膨らむ
BAD HOP 新たな生き方変わりゆく昔の日々から

俺の生まれた街 朝鮮人、ヤクザが多い
幼い少女がCharlie 絶えねぇレイプ 飛び降り
金のために子供達も売人か娼婦へ
生きるために罪を犯す 罪人かホームレス
こんなところで真面目になんて難しい
積み重なる空き巣に暴行、毎夜の悪さは普通だし
15の頃には数十人まとめて逮捕 それでも一度のことじゃないから
反省ない態度とって繰り返し 気づけば暗がり 切れない黒い繋がり
進路は極道かハスラー なるようになった お似合いのカルマ
金を稼ぐために必死に夜通し労働し 毎月支払う高い額に 理不尽な上納金
毎日働く工場と悪事で 日に日に汚す手 この街抜け出すためなら欲望も殺すぜ
ガキの頃と変わらない仲間と目にするshinin’
We Are BADHOP ERA 今じゃドラックより夢売る売人
BAD HOP 『Stay』より抜粋)

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