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■寄付を増やすためにプログラマができること

 エイズ予防事業の資金を集めるおっぱい募金では、AV女優や彼女たちのおっぱいを揉んだ募金者たちが共に熱狂し、互いに笑顔になっただけでなく、ワクワクしながらネット上で報告していた。
 寄付する側にとってこれほど満足度の高い寄付アクションは、他の多くの寄付現場ではまず見られない。
 その結果、2日間で7175人が参加し、寄付者も寄付額も史上最高の数にふくれ上がった。

 なぜ、おっぱい募金はこれほどまでに支持されたのか?
 いろんな理由が考えられるだろうが、なかなか寄付者や寄付額を増やせないでいるほかの多くの寄付アクションと比較する時、寄付者があらかじめ持っている欲望(ニーズ)に関連づけられた仕組みだった点は見逃せない。

 「欲望(ニーズ)に見合うだけの価値がある」と期待できればこそ、人はお金を払うのだ。
 このことは、寄付を求めるNPOはもちろん、募金事情を知らない人に学んでほしい点だ。

 人は誰でも、常に何かの欲望に動機づけられている。
 「本を読みたい」と思えば、自分の読みたい本を探して買う。
 僕自身、自分の執筆した本を「寄付つき商品」にしてきた。
 僕の本を買ってくれたら、僕の収入になる著者印税の10%(=本体定価の1%相当)を指定のNPOに僕自身が寄付するのだ。

 読者にとっては、読みたい本を「読みたい」という欲望に素直に従って買うだけの話だ。
 売上の一部が何かの社会貢献に使われると知っても、これから読む本の内容に共感して買ったわけではないし、寄付先の団体の活動に共感したから本を探して買い求めたわけでもない。

 タイトルや立ち見で内容の一部を見て「面白そう」と思ったら、お金を払っただけのことだ。
 本の内容をくわしく知らなかったり、寄付先の社会貢献活動に共感してないからといって、何ら問題はない。
 寄付金を増やすこと1点に絞って考えるなら、「善意」だって無くてもかまわない。
 共感や善意などなくても、読みたい本を買いさえすれば、売上の一部は寄付され、社会貢献活動に使われるのだから。
(※僕の場合は、3・11で被災した子どもや親に育てられていない子どもの養育・教育の活動をしている団体などに寄付している)

 本による寄付を増やすには、タイトルや立ち読みなどの少ない情報の中に「どうしても読みたい」と思わせるだけの内容を過不足なく表現することにある。
 目次や本文など本のどこをチラ見されても、「よし、読みたい!」と思わせるだけの価値を向上させることが、寄付を動機づけるのだ。
 これを敷衍すると、より多くの人に「寄付したい」と思わせるだけの価値を明示・向上させれば、寄付者も寄付額も増えるってこと。

 改めておっぱい募金を考えてみよう。
 1000円以上の募金をする18歳以上の参加者にとって、アダルトビデオの中でしか見られなかったあこがれのAV女優に会えて、ふだんなら絶対にありえない「生のおっぱいに触ること」が実現できて、しかもその女優さんから満面の笑みで「ありがとう」と感謝までされる。

 寄付額とその対価(価値)を比べれば、費用対効果として「かなり良い」と感じる人は多いだろう。
 事前に1000円しか募金しなかった人は、「もっと出せばよかった」と後悔してるかもしれない。

 僕の「寄付つき」の本も、AV女優たちのおっぱいに負けないところまで価値を引き上げる努力をしなければならないだろう。
 彼女たちは、プロボノとしてボランティアを行った。
 僕は、ボランティアであれだけ大きな価値を提供できる文章を書く自信はない。

 さて、ここからが本題なのだが、ものすごく社会的に有益な活動をしてるNPOでも、なかなか寄付金を増やせずにいるのはなぜか?

●同情・共感より、確かな「欲望」にひもづけた寄付へ


 彼らが、より多くの人に「寄付したい」と思わせるだけの価値を明示・向上できているかといえば、答えは「No!」だ。

 その原因は、いろいろある。

① 活動自体の正当性を広報して共感を集める寄付アクションがメイン

② 活動自体がまだ多くの人が納得できる成果を生み出していない
③ 活動によって救われる社会的弱者の満足度を伝えていない
④ 寄付アクションをメディアに広報する戦略も知らず、広報専任スタッフもいない

 このままでは、欲望に動機づけられて短期間により多くの資金を調達できるた寄付アクションは、外注する他になくなる。
 寄付を集めるイベント・プランナーに仕事としてお願いできるチャンスがあるなら、すればいい。
 しかし、それは大都市にしかありえないし、チャンス自体が乏しい。

 では、地方のNPOでも、人出不足でも、寄付金をなるだけ多く集めるにはどうすればいいのか?

(※②③の課題を解決できることを前提に)

 そこで、プログラマの出番となる。

 今日のNPOは、たいてい公式サイトやブログを持っている。
 すでに、クリックするだけで寄付になるブログパーツや、寄付サイトに誘導するブログパーツなどはある。
 しかし、前者はクリックする動機がそもそも弱いし、後者は長文を読ませて共感を引き出すので寄付者を絞り込んでしまう。
 つまり、寄付という行為を偶然に任せているのと同じで、欲望と動機づけられてはいないのだ。

 人々のふだんの欲望と動機づけるには、やはり「寄付付き商品」を買ってもらう方が無理がないだろう。

 だから、社会貢献になる商品だけを専門に扱うオンラインショップ「SooooooS」(スース)が作られた。
 だが、社会貢献の意識が高い人が増えてくれないとこの店を訪れず、NPOへの寄付も増えない。
 時代や市場の変化を待たないと訪問者や寄付が増えないのでは、NPO側のメリットはなかなか高まらないのだ。
 その点では、Gooddoも同様といえる。

 ここで、「自分の商品・サービスを売りたい」という欲望と「寄付もしたい」という欲望を併せ持つ「寄付付き商品」の提供者の視点に立ってみる。
 たとえば、僕は自分の本の印税の一部を寄付しているが、寄付先のNPOがその事実を公式サイトやメルマガなどで盛んに広報することはない。
 これでは、僕よりはるかに売れている有名な作家やミュージシャンに印税からの寄付を安心して勧めることはできない。
 それどころか、寄付付き商品を作れる多くの企業からも関心を持たれないままだ。

 これを解決するには、IT企業の技術力が必要だ。
 web上で「寄付付き商品」の売上を増やせる仕組みを作れば、それだけでNPOに寄付が集まるのだから、NPO側はマンパワーが少なくても地方にいても、サイトがあるだけで資金調達できる。
 具体的にどうすればいいのか?
 それを提案しておきたい。


●寄付市場も認定NPOも増える今こそ、寄付ツールの開発を
 
 NPOの公式サイトを見る人は、そのNPOに多少なりとも関心のある人だ。
 同時に、自分の買いたい商品の情報を知りたいという欲望もある。
 それなら、公式サイトのトップページの目立つ位置に複数の「寄付付き商品」を示す帯のアイコンを設置すればいい。
 この時点では寄付先のNPOはどこでもいいが、とりあえずこの帯を「寄付ロール」と仮に呼ぶことにしよう。

 その商品リストは通常、ランダムに変化させる。
 同時に、「寄付付き商品を作りたい方はこちらへ」という誘導リンクも設置しておく。
 誘導リンクの先では、寄付したい出品者がすでに寄付しているNPOを選び、商品のAmazonページを入力する。

 もちろん、出品者の氏名・住所・連絡先なども入力する。
 その手続きが終わると、自動的に指定したNPOの公式サイトのトップページに商品のAmazon画像が表示され、それを見た人がワンクリックで購入できるようにする。
 トップページには、ログインすれば、自分のほしい商品リストが表示できるようになることを説明しておく。

 いざ、新規ログインしたユーザは、年齢・性別・趣味・年収・寄付したい社会貢献のジャンルなどの属性を入力する。
 その情報を元に、このサービスの出品者が登録したAmazon商品(寄付付き商品)の中から一番近いものをユーザに示す。
 マッチング精度を高くすれば、ユーザの購買欲に従った寄付が実現できるはずだ。

 Amazonには、すでに多くの寄付付き商品が出品されている。
 IT企業としては、それらの情報を集めたり、「NPO 寄付」で検索して「寄付付き商品」を探したり、「SooooooS」(スース)から寄付付き商品をリストアップするなどの作業が必要になる。
 そうした情報を元に寄付付き商品の出品者と連絡をとり、彼らが寄付しているNPOに「寄付ロール」の設置をするようお願いしてもらうといい。
 設置がブログパーツぐらいカンタンなら、サイトやブログのタイトルの下に貼ってくれるだろう。

 もちろん、実際には「寄付ロール」のプレスリリースを発表し、出品者もNPOもIT企業の作ったサービスサイトから、出品・購買の専用ブログパーツをダウンロードすればカンタンに設置できるようにしておけばいい。
 買う側のユーザは、自分のブログなどで自分の応援するNPOの商品を表示できる。
 「寄付付き商品」の出品者も、自分のブログなどで自分の商品で寄付するNPOを応援できる。

 このブログパーツを貼る場所は、NPOのサイトに限定されず、どこにでも貼れるようにする。
 そうすれば、ブログパーツ自体が広告媒体として育っていくので、IT企業の収益になる。
 もちろん、「寄付ロール」自体にも広告を貼れる。

 そうした広告とセットで、寄付金がどのように使われたかを示すブログ記事へのリンクがつけられると、なお良いだろう。
 長ったらしいメルマガをしょっちゅう寄付者に送ってくるNPOもあるが、要領を得ない文章で、そのNPOの活動で救われたはずの肉声も拾われて無いことは珍しくない。
 救われる人の満足度も同時に広報できる仕組みも、寄付を動機づけるのに必要なものだ。

 寄付付き商品が増えてくれば、IT企業自身が有名企業とコラボしてオリジナルの寄付付き商品を開発し、ECサイトを作って限定販売すれば、新たな収益の仕組みを作れる。
 国内外の有名なミュージシャンや漫画家と組んで、オリジナルの寄付付き商品だって作る楽しみもできる。
 うつ病になって辞めていくプログラマの仲間たちを救済するNPOを作って、そこに寄付できる自社サービスを開発してもいいはずだ。

 とくに、東京などの大都市にあるITベンチャーなら、同業他社も早く「寄付ロール」や専用ブログパーツを開発したほうがいいかもしれない。
 寄付市場はこれから大きくなっていくからだ。
 遺贈の市場も増える一方だし、寄付金が税控除の対象になる認定NPOも増える一方である。
 個人も企業も社会貢献や寄付に関心が高まっていくばかり今日、IT企業にはもっとやれることがあるはずだ。



 関心があるプログラマやIT企業の経営者の方は、今一生までメールされたし。
 税金を政治家にやるよりも、寄付による民間の社会変革に賭ける方が、社会的責任投資としても有効な時代になりつつあるのだから。


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