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■「支援される側」から「支援する側」になりたい

 311からの復興などの社会貢献活動に取り組む高校生7団体が成果を発表する「ふくしま高校生社会活動コンテスト」が開かれた。
 最優秀賞に輝いたのは、障がいを持つ生徒たちが通う平養護学校高等部

 その生徒会ボランティア部で、2年生の部員2人とともに街頭で献血への協力を呼びかけ、被災地へ送る募金を集めた同部1年生の三浦つかささん(16歳)は、こう言った。

「障害者も『支援される側』から『する側』になりたい。ボランティア部をつくり、一緒に活動してくれる先輩のおかげで『支援する側』になれた。感謝したい」
Yahoo!ニュースより)


 「支援される側から、支援する側になりたい」という障がい者のニーズは高い。
 そのニーズは、障がい者だけではなく、被災者や貧困者、被介護者、傷病者などさまざまな「社会的弱者」に共通してあるものだ。

 これまでの支援は、一方的に社会的弱者に施されていた。
 「あなたたちはふつうのことができない弱い人なのだから、私たちの力を借りなさい」という声の前に、支援される側は「申し訳なさ」を押し付けられたまま、従うしかなかった。

 従来の支援は、ある意味で「支配」そのものといえるだろう。
 それは、公式発表の数字にはっきりと表れる。
 下記は、養護学校を卒業した障がい者の通う福祉作業所で、通所する方に支払われた工賃とその推移だ(厚労省の発表)。



 就労支援の名の下に、月収が最低賃金を下回っている。
 B型にいたっては、工賃の上昇率があまりにも遅い。
 6年間で月収が2,000円も増えてないのだ。

 これに障がい者年金を足したところで、健常者並みに自由に人と交際したり、恋愛したり、出産・子育て・親の介護ができるほどの収入にはならない。
 だから、障がい者を小馬鹿にしているとしか思えない数字を知った人々の中から、「これは見過ごせない」と心を痛める人たちが出てくる。



●「支援から協働へ」と関係を変えるソーシャルビジネス

 こうした低い工賃の問題を解決しているのは、厚労省ではない。
 民間の社会起業家たちだ。
 その詳細な事例は、『ソーシャルデザイン50の方法』(中公新書ラクレ)や、『よのなかを変える技術』(河出書房新社)に書いたので、このブログ記事ではエッセンスだけを書く。

 社会企業家たちは、障がい者が負う同じ労力と時間で収益の最大化を図る。
 つまり、「障がい者だから健常者並みの仕事ができない」と思考停止する構えをやめて、彼らが無理なく毎日できている作業でも生み出せる「価値の高い商品・サービス」を作り出すのだ。

 同じお菓子を作るにも、「障がい者が作りました」という同情で買ってもらうような粗悪品を作るのではなく、プロのパティシエに依頼してレシピ指導をしてもらい、障がい者それぞれの特性を活かした人員配置をマネジメントし、高品質のお菓子を継続的に作れるようになるまでトレーニングする。

 そうすれば、有名デパートで1日ではけてしまうような超美味しいスィーツを売り出せるし、その噂はデパート業界に瞬時に広まるので、発注が増え、自分の作業所ではさばけない作業は地域の他の作業所にも発注することができるようにもなる。

 こうして発注を増やせば、工賃も何倍にも跳ね上がっていく。
 そのようにして健常者並みの月収を実現した事業体も、全国で急増している。
(※そうした事業体は国から補助金を受け取る福祉作業所の運営をやめ、べつに株式会社などの法人を新たに立ち上げて障がい者を雇うため、厚労省の就労継続支援の数字に反映されない)

 障がい者の方々も、高値を付けた商品がどんどん売れ、一般市民にすごく喜ばれてる姿を見て、自分たちの毎日の仕事に誇りを持つことができる。
 これには、福祉作業所の職員側が商品開発や流通開拓に汗をかくことが求められる。

 知恵や経験が無ければ、福祉の現場がわかってるプロを探してお願いし、より高い収益が見込める商品開発へと努力を重ねる。
 それは、国からの補助金で一方的な支援を障がい者に何年も同じように施す思考停止ではなく、障がい者が働く喜びを感じられるように、職員自身も働く喜びを得ようと同じ汗をかく「協働」だ。

 社会企業家によるソーシャルビジネスは、「支配的な支援から対等な協働へ」と障がい者との関わりそのものを変えることで、「みんなで稼ぐ共同体」へと組織の在り方自体を変えるのだ。

 こうした好循環の構図を知ろうともせず、ソーシャルビジネスをただの社会貢献事業だと勘違いしたまま、ネット上でソーシャルビジネスをdisったり、からかったりしてる輩もいるが、いざ自分が社会的弱者になった時に、頼れるのは行政や政治ではなく、民間の社会事業であることを思い知るに違いない。

 ソーシャルビジネスは、障がい者だけでなく、前述したさまざまな「社会的弱者」と共に立ち上がり、ビジネスによって幸せと希望を分かち合っている。
 社会的弱者の持つ苦しみ(=社会的課題)を解決するための優れた仕組みを作り出せた成功事例は日に日に増え続けてるが、その成功を担保するキーワードの一つは「当事者固有の価値」だ。

 どんな苦しい環境にいる人でも、その苦しさゆえに蓄積した知恵や経験、スキルや人脈などが多様にあり、それは仕事や現金に変えられる資産である。
 「社会的弱者」とひとくくりにされてしまう人たちと泥臭く深い付き合いをしていけば、苦しんできた人にしかわからないその資産が何かがわかる。
 そのことによって、それまで見えなかった価値やその大きさも見えてくるのだ。

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