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■低所得者層を救う「起業塾」を、あなたの町で

 児童虐待の相談件数が、約9万件を記録した(2014年度の速報値)。
 児童虐待や援助交際、家出や少年問題の一部には、「家庭の貧困」の問題がある。

 「家庭の貧困」は、親が孤立する子育てや、教育投資が動機づけられない文化、教育投資したくてもできない経済的苦境、近隣住民どうしでの助け合いの機会の喪失など、複合的な事情がからみあって、毎日少しずつ悲劇へとこじらせていく。

 こうした問題を解決する一つの突破口は、家庭内の所得を家の内外の人たちと上手に連携して底上げしていくことにあるだろう。

 それには、子ども自身が自分の力で自分が無理なくできる仕事を作り出せるように、収入を得る手段を学ぶ必要がある。
 つまり、起業教育が「貧困大国ニッポン」には求められているのだ。

 起業というと、金に余裕のある一部の「意識高い系」だけができることのように勘違いしてる日本人は少なくない。
 でも、現実はむしろ逆だ。

 バングラデシュの社会起業家ムハマド・ユヌスは、グラミン銀行を作り、読み書きもできない貧困層の農家の女性たちに金を貸し、彼女たちにビジネスを基礎から教えることによって、貧困から脱却させ、ノーベル平和賞を受賞した。
 起業とはそもそも「弱者の選択肢」であり、貧困から立ち上がる生存戦略なのだ。

 日本でも、さまざまな障がい児に絵を描いてもらって、それをプリントした名刺を販売することによって、子どもたちに売れた分の印税を支払う仕事を、埼玉県川口市で活動している親たちの会「からふる」が実際に試みている。
 小学生から続けていれば、中高生になる頃には、売れ筋のデザインや、周囲の大人たちにほめてもらえる絵が何なのか、わかってくるだろう。

 僕の友人の重度障害者・佐藤仙拓くんは、同じ重度障害者の友人と一緒に19歳で株式会社仙拓を立ち上げて起業し、「寝たきり社長」と自称しながらホームページなどのデザイン制作の仕事を自分で作った。
 こうした事例は、拙著『ソーシャルデザイン50の方法』(中公新書ラクレ)にくわしく書いてある。

 「子どもだから~できない」とか、「ハンデがあるから~できない」という発想で思考停止するのではなく、「それでもできる仕組み」を作り出した成功事例に学び、最初は小さい額面でも、少しずつ収益を上げていくことは、決して難しいことではないのだ。

 それに、子どもは、大人になるまで何年もある。
 小学生なら10年近くある。
 中高生でも5~6年はある。
 仕事を覚え、収入を増やしていくのに、十分すぎる時間がある。



●自分の地元に起業塾を作る可能性について考えてみる

 若者の移住・定着を望む地方はもちろん、都市部にも、空き物件が今、増えている。
 そうした空き物件を使って、起業塾を始めるならNPO法人として事業を行うのがいいだろう。

 あくまでも「低所得者層を救う」というミッションで運営されるにしても、その恩恵を受けるのは貧困当事者だけでなく、地域経済の活性化に資するわけだから、地域の市民の共感を呼びやすい。
 NPOなら、大学生などをボランティアで集められるし、金では買えない「実務インターン」としての貴重な経験を提供できる。

 公益性の高い事業なら、起業塾の立ち上げ資金をクラウドファンディングや自治体の助成金、そのNPO活動に共感する賛助会員(地元企業や個人)などから手広く調達できるかもしれない。

 一般の受験塾にも通えない貧困層の場合、塾代より安い月謝を設定する必要がある。
 公立の中学生の1年間に支払う「学習塾費用」「家庭教師費用(通信教育を含む)」を、学年別に比較すると、1年間で平均約175,000。毎月だと、ざっと15000円になる。

 ということは、1人の生徒あたり5000~1万円の月謝を親に負担してもらえばいい。
 受験塾とは違って毎週何日も通う必要はないし、基礎と実践を短期間で教え込めば、この程度の金額は数か月もしないうちに、どんな子どもでも毎月稼ぎ出せるようになる。

 つまり、実質的には、3か月以後は子ども自身が月謝分を支払えるようになるので、親の負担はなくなる。
 最初の数か月分の最大3万円を出せないほどの貧困層の家庭には、塾自体がそうした事情を公式サイトで公開し、3万円を寄付したい個人・企業を募ればいい。

 いずれにせよ、低所得者層だけを生徒にするわけではなく、裕福な家の子でも、地域の大人でも、大学生でも、誰でも学べる教室にしておけば、もっと高い授業料を属性ごとに設定すればいい。

 低所得を証明する客観的な基準や、住居や職場をリサーチするチームをNPO内に抱えておけば、機動的に低所得者層の子どもだけに安く授業を受けてもらうこともできる。

 あとは、実際に仕事を作り出すノウハウを教える側の人材の問題だ。
 地域には、以下の人材がすでにたくさんいる。

①青年会議所に集まる地元の有名企業の経営者
②経営者を引退して年金生活で時間を持て余している健康な高齢者
③店やネットショップなどで稼ぎながら、経営者の集まりに顔を出してる自営業者
④生徒の習熟度を確認し、必要な支援と結びつけるマネジメントのできる大学生など

 そうした経営実務を理解し、業績を上げているプロを講師に迎えつつ、〆切と収益目標額面、商品・サービスの価値、ニーズの読み取り方、よのなかの仕組みなどの授業プログラムを作り出せばいい。
 そうすれば、親がどんなに貧しくても、子どもは少しずつ自分の力で進学費用や将来への希望を作り出せるようになる。

 教室に多様な人々が集まることで、お互いに自分の足りないものを補い合い、1人でできない仕事は一緒に会社を立ち上げる試みも始められるだろう。
 どうしても稼ぐのが下手な子には、親ではない大人がわかりやすく教えてくれることもあるだろうし、そうした助け合いを塾の基本方針にすればいい

 大手の塾や予備校は少子化で受験塾から撤退しつつあるが、現代のニーズは受験より起業にある。

 大企業で雇われても、家のローンや子どもの教育費もかかる40代で突然リストラされる時代だ。
 いざ会社から追い出されても、同じ年収を確保できるだけのスキルを身に着けておくことが、これからの日本で生き延びるために必要不可欠なリスクヘッジになる。
 それは、自分で自分の仕事を作り出す起業のスキルだ。

 そうした切実さをふまえながらも、時々、有名企業の社長を招いて講演会を企画するなど、真摯に起業を学ぶ人が将来に希望の持てる取り組みもやればいい。
 起業は、ニートやホームレスなどを支援するNPOでも、すでに各地で試みられている。
 できない理由なんて、どこにも無い。

 そして、同じ起業をするなら、まだ人々の関心が薄いためにライバルが少ない「社会起業」についても、『よのなかを変える技術 14歳からのソーシャルデザイン入門』(河出書房新社)を読んで学んでおくと、目からウロコかもしれない。

 起業なんて、怖くない。
 始めてみれば、楽しいもんなんだよ。
 それでも自営業が怖いなら、気軽に相談してほしい。


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